ドキュランド「アメリカと3人の孫たち」に見るメキシコの介護事情!警察や司法の実態についても

2020年3月13日にEテレで午後10時より放送のドキュランドは、「アメリカと3人の孫たち」と題して、93歳の祖母の介護をする3人の男兄弟の話を取り上げていました。

2018年のアメリカの作品ですが、舞台はメキシコです。

タイトルの「アメリカ」は祖母の名前です。この番組から、日本とは異なるメキシコの警察や司法、介護の事情が見えてきました。

 

ドキュランド「アメリカと3人の孫たち」に見るメキシコの介護事情

2021年1月22日に再放送されました。

孫たちが介護に来た理由

孫たちがアメリカの介護のためにメキシコの南西部コリマにある実家に来ることになったのには理由がありました。

アメリカが自宅でけがをしたことで、父が虐待の疑いで逮捕されてしまい、介護の担い手がいなくなってしまったためです。

3人の孫のうちの一人・ディエゴは実家に戻り、兄のロドリゴとその恋人と一緒にアメリカの介護をしながら父の裁判を待つことになりました。

それまでアメリカの世話を父が一人でしていたのですが、父が留守にしていた時に、アメリカがベッドから落ちて床に倒れ出血、それが介護放棄ととられて父は刑務所に入れられたのです。

ここで思うのは、実際の虐待の事実がないのに刑務所に入れてしまうシステムの疑問と、警察と地域の福祉の管轄の連帯が取れているのかという事です。

拘留は長引き、8カ月にも及んだのでした。

メキシコの介護事情

メキシコではかつての日本がそうであったように、施設よりも家族による介護がよい、という考え方が根強く、施設の入所は家族に見捨てられた、家族を見捨てたという抵抗感がまだまだあるようです。

この番組の中でもディエゴが「施設に入れようと思ったことはない。施設では孤独を感じるから」と話していました。

そもそもメキシコでは公的施設は非常に少なくて、身寄りがいないか、いても支援が得られない困窮者を対象とした保護施設だという事です。

また、慈善団体が運営する施設は、財源や人員が不足していて、適切で十分なケアが提供されているとはいえないようです。

家族の介護は介護者に大きな負担を強います。日本では介護保険制度が導入されて、家族以外が介護にかかわることが当たり前になってきました。

施設入所に対する抵抗感も薄れてきています。それ自体は良いことだと思いますが、介護が機械化されて尊厳をもって人生を終える人が減るとしたら悲しいことです。

※メキシコの介護の事情についてはこちらの論文を参考にさせていただきました。


メキシコの警察や司法の実態

2人の孫と兄の恋人で介護を始めて半年過ぎるとアメリカの状態は徐々に改善され、一人で歩けるまでになります。

サーカスで働いていた長兄のブルーノも戻り、3人の孫による介護が続きます。
ディエゴはそれまで兄たちとうまくいっていなかったのですが、今は3人が団結して介護にあたるようになりました。

ブルーノは妥協しない性格で、アメリカの体のために散歩に行くと自分で歩かせようとします。

アメリカが「手をつないで」というのを許さず、体が前傾になっているのを直させようと肩を押したります。

その状況を見ていた誰かが虐待を疑い警察に通報し、逮捕はされなかったものの、父の拘留を長引かせるかもしれないと言われます。

父の拘留を終わらせようと動いていたのに不祥事を起こしてしまったからです。

弁護士は奥の手を使って拘留を終わらせることに成功します。

それは賄賂を使って口利きしてもらうことでした。ディエゴたちは「汚職まみれの国に感謝」と言って喜びました。

ところがそのお金をどこから出すかでディエゴとブルーノがけんかをします。

ブルーノがアメリカのお金を使うと言ったのに対し、ディエゴは使わないほうがいい、という考えだったことから口論になり取っ組み合いになってしまいました。

ディエゴのアメリカに対する介護の様子

ディエゴは3人兄弟の末っ子ですが、一番介護にかかわったようで、アメリカと一緒にいる様子が映し出されます。

ディエゴと一緒にいるアメリカの様子は穏やかで幸せそうです。

夜はアメリカのベッドの横の床に布団を敷いて寝ているのですが、夜中に「おしっこしたいの」と言われて、おまるを持ってきて座らせ、終わったら後始末をして寝かせる様子がありました。

その時に「ありがとうばあちゃん」と言っていました。粗相をせずに教えてくれたからでしょうか。なんて優しいのだろうと胸が熱くなりました。

オムツにせず最後まで自力で排尿させるのは介護者には負担ですが、介護を受けている高齢者にとっては自尊心を失わずにいられる、寝たきりにならないなどの利点があると思います。

メキシコでは家族が認知症でも尊厳をもって人生を終えてほしいという気持ちが強いようです。

アメリカは孫のディエゴのことを息子と間違えたり、認知症の症状はありますが、孫たちとの同居を楽しんでいるようでした。


まとめと感想 

アメリカは2017年に亡くなりましたが、最期の様子は映像にはありません。

ディエゴとブルーノがアメリカのものとみられる遺灰を入れた入れ物を持って車に乗るところで終わっています。二人は笑顔です。

おそらく最後まで看取りができたことで悔やむ気持ちがないからでしょう。

父は釈放後介護を放棄し、兄のロドリゴは仕事のため恋人と出ていきました。
残ったディエゴとブルーノは親戚を頼って引っ越し、そこでアメリカの介護を最後まで続けたようです。

見終わって、介護で翻弄される家族の事情はどこの国も変わらないと思いました。最後のほうにアメリカがディエゴにこんな風に言っていました。

「最後に見捨てられる人っているでしょ。一人ぼっちで見捨てられて誰からも愛されない・・・」

アメリカの場合はその反対で、孫たちが見捨てることなく見てくれましたが、アメリカは見捨てられる人のことを可哀想に思っていたのでしょうか。

いろいろ考えさせられるところの多いドキュメンタリーでした。

ドキュランドはNHKEテレで毎週金曜の午後10時に放送されています。

ドキュランド関連記事はこちらです。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です