NHKこころの時代・コヘレトの言葉2の「空」を考察!苦しくても生きる意味とは?

 

旧約聖書「コヘレトの言葉」シリーズの第2回「人生のはかなさを知る」が11月15日に放送されました。

コヘレトの言葉(2)「空」について、危機と苦難の時代を経て書かれ「異端」ともされてきたこの書は現代にどう響くのか、コロナ禍での生きる意味についても考えていきたいと思います。

NHKこころの時代・コヘレトの言葉2の「空」を考察

「こころの時代~宗教・人生~ それでも生きる~旧約聖書・コヘレトの言葉」(1)は4月に放送されましたが、コロナの影響で続きがずっと延期されていました。

「コヘレトの言葉」(1)についてはこちらに書いています ↓

NHKこころの時代・旧約聖書「コヘレトの言葉」を解説!辛さ・苦しみの中でそれでも生きる意味とは?

コロナ禍での状況を踏まえて、「コヘレトの言葉」から私たちが受け取れるものがさらに大きい意味を持ってきたような気がします。

このシリーズは、小友聡さんと、若松英輔さんの対談形式で進められています。

小友聡(おとも・さとし): 牧師、東京神学大学教授。コヘレトの言葉の研究に障害をかけて取り組んでいらっしゃる方です。


引用:東京神学大学HP

若松英輔(わかまつ えいすけ): 批評家、随筆家。東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授。

今回の対談では、「コヘレトの言葉」を通して、闇が私たちに光を準備しているという事を考えてみたい、とおっしゃっていました。


引用:imidas

「コヘレトの言葉」の特徴

コヘレトの言葉」は、ヨブ記や箴言などとともに知恵文学と呼ばれます。

書かれたのは紀元前5世紀から2世紀のヘレニズムの時代、イスラエルの人がバビロン捕囚につながる過酷な歴史を体験した後に書かれのだそうです。

現実の過酷さを体験して、今までの常識が通じない不条理の世界の中でいかに生きるか、を書いたものだと言えるでしょう。

コヘレトが誰かはわかっていません。

コヘレトはヘブライ語で「集める人」と言う意味なので、集会を開いて人々に様々な知恵を語っていた人物なのではないかという事でした。

「コヘレトの言葉」は些末だが深い

「コヘレトの言葉」は旧約聖書の中でほんのわずかの分量ですが、内容は深く、教えられることが多いです。

コヘレトの言葉は周辺的な書であり、特に重要な部分ではない、と小友さんは言います。

しかし、コヘレトの言葉が分かるようになれば旧約聖書自体が分かるようになるのではないか、とも考えているそうです。

若松さんは、カトリックの哲学者ガブリエル・マルセルの言葉を紹介していました。

「私たちが探しているものは本島ではなくて離れた小島にある」というものです。

ちょっと離れたところから物事を俯瞰すると今まで見ていたところとは別のところに肝心なものがある、という事もありますね。

悲観的な言葉が多い

「空の空 空の空 一切は空である」のように悲観的な言葉が多いのが特徴です。

人は幸せを見ない (6章6節)

いらだちと病と怒りは尽きない (5章16節)

死ぬ日は生まれる日に勝る (7章1節)

へベルとは空(くう)

「空」と訳されるヘブライ語の「へベル」は、「空しい」「無意味」などいろいろ訳せます。

「へベル=空」という言葉が「コヘレトの言葉」の重要なキーワードとなっています。

小友さんは「空」を「束の間」と考えているそうです。

人生は「空」=「束の間」であるけれども、それに気が付いたときに、生かされていることに気付き、今この時をどう生きるかを考えるようになる、と言います。

「コヘレトの言葉」の中で「空」を含んでいる部分 ↓

地上に起こる空なることがある

悪しきものにふさわしい報いを正しきものが受け

正しきものにふさわしい報いを悪しきものが受ける

私はこれも空であると言おう 

(コヘレトの言葉 8章)

 

私は心の中で言った

「さあ、喜びでお前を試そう 幸せを味わうがよい」

しかしこれもまた空であった 

(コヘレトの言葉 2章)

 

空である短い人生の日々に 人にとってなにが幸せかを誰が知るのだろう

人はその人生を影のように過ごす

そののち何が起こるかを 

太陽の下 誰も人に告げることはできない 

(コヘレトの言葉 6章)

 

空は空(から)

空は空っぽの「から」とも読むことができます。

若松さんが言うには、充満したところには風が吹かない。私たちの魂も空にしないと、新しいものが入ってこないのだそうです。

私たちはいろんなものがいっぱいになっている。いっぱいになっていることで満たされている気がするが、実際は空にしないといろんなものが見えてこない、と若松さんは言います。

神学者のマイスター・エックハルトの説教集の中の言葉を引用して説明していました。

「わたしたちは聖なる福音書のうちでわたしたちの主が神殿に入り、そこで売り買いをしていた人々を追い出して、鳩やそのたぐいのものを売っていた他の人々に向かって、このようなものはここから運び出しなさい、と語ったのを読む。

なぜイエスはそこで売り買いをする人々を追い出し、鳩を売る人々に鳩を片付けるように命じたのだろうか。

それはイエスが神殿を空にしておきたかったからに他ならない」

引用:エックハルトの説教集

神殿という聖なる場所を空にすることで、風を通し、神の言葉が入ってくるように、という事なのでしょう。

苦しくても生きる意味とは?

作家のパウロ・ジョルダーノは、「コロナパンデミックは現代の文明にレントゲンをかけている」と言っているそうです。

人間の心の中にある差別・敵意・憎しみがはっきり表れてきた」と小友さんは言います。

しかしひとたび外を見ると、日は昇り日は沈む。川は流れ自然は変わらないでそこにあります。

「コヘレトの言葉」は困難な状況下で人々が必要とする「言葉の杖」の役割を果たしているようです。

労苦の中で幸せを見いだす

人生は辛いものだが、労苦の中でも食べて飲み、日常生活を送ることで幸せが見えてくる、と言っています。

私は人生をいとう
太陽の下で行われる業は 私にとって実につらい
全ては空であり 風を追うようなことだ

太陽の下でなされる
全ての労苦と心労が その人にとって何になるというのか
彼の一生は痛み その務めは悩みである
夜も心は休まることはない
これもまた空である

食べて飲み労苦のうちに幸せを見いだす
これ以外に人に幸せはない
それもまた 神の手から与えられるものと分かった

(コヘレトの言葉 2章)

 

人との繋がりを示唆

「コヘレトの言葉」は、悲観的な言葉だけでなく、人との繋がりを示唆する言葉もあります。

人間は一人で生活していても、全く一人では生きてゆけないものです。

人に頼ったり頼られたりしながら生きていくものだと分かります。

一人より二人のほうが幸せだ

ともに労苦すれば 彼らには幸せの報いがある

例え一人が倒れても もう一人が その友を起こしてくれる

一人は不幸だ 倒れても起こしてくれる友がいない

 

また二人で寝れば温かいが ひとりではどうして暖まれよう

例え一人が襲われても二人でこれに立ち向かう

三つ編みの糸は たやすくは切れない

 

コロナ禍で離れた人と会えないことが続きました。しかし、会えないほどに離れた人のことを考えます。

「離れた人とともに生きる」「集まるのではなくつながる」ことが今の私たちにできること。

コヘレトは「共生」に希望を見ているのでした。

共に生きる、とは物理的なことではなく、離れていても生き別れても気持ちがそばにいる、という事を指しているのでしょう。

貧しくても知恵ある少年のほうが

もはや忠告を聞き入れない老いた愚かな王より勝る 

(コヘレトの言葉 4章)

 

危機に陥った時に誰の言葉を聞くべきか 「真実を語る小さなものの声を聞け」とコヘレトは述べています。

絶望からの希望

小友さんは、5年前脳梗塞になりました。

言葉が出てこない、右の手が動かない状態になり、その時にコヘレトの言葉が響いてきたそうです。

確かに全て生きるものとして選ばれていれば 誰にも希望がある

生きている犬のほうが死んだ獅子より幸せである

(コヘレトの言葉 9章4節)

 

犬は聖書の中で犬は一番地位の低いものの象徴。

「私たちはともすれば、犬では駄目で、獅子になることを求められているのではないか。しかし犬であっても生きることが大切。

今生きていることは神からの賜物だから、生かされている生を喜んで生きよう」と思うようになったそうです。

さあ あなたのパンを喜んで食べよ

あなたのぶどう酒を心楽しく飲むがよい 

(コヘレトの言葉 9章7節)

 

愛する妻とともに人生を見つめよ

空である人生のすべての日々を

それは太陽の下 空であるすべての日々に 神があなたに与えたものである

それは太陽の下でなされる労苦によって あなたが人生で受ける分である

(コヘレトの言葉 9章)

 

 

空だからこそ生きる

コヘレトの時代の平均寿命は30代半ば。過酷な生を生きていました。

生きるとは時に不条理なこともあるけれども、生かされていることを知り、苦難の中でも生きることが大事だ、とコヘレトは言っています。

あなたの心から悩みを取りさり

あなたの体から痛みを取り除け

若さも青春も空だからである 

(コヘレトの言葉 11章)

 

空である日々に 私はすべてを見た

義のゆえに滅びる正しきものがおり 悪のゆえに生き長らえる悪しきものがいる

あなたは義に過ぎてはならない 賢くありすぎてはならない

どうして自ら滅びてよかろう

あなたは悪に過ぎてはならない 愚かであってはならない

あなたの時ではないのにどうして死んでよかろう 

(コヘレトの言葉 7章)

 

まとめ

コヘレトの言葉(2)「空」について見てきました。

この番組のテーマは「それでも生きる」です。

ともすれば、悲観的になり、生きていることに意味を見出せなくなることが誰しもありますが、そんな時に心の杖となるコヘレトの言葉があると思うとそれだけで安心できる気がします。

大昔の知恵が今の私たちにも大事なことを教えてくれているのですね。

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